『―――――――よし。これでOKのはず・・・・・・』
一人の男が部屋の床に何かを描き終えた。
その時一人の女がその部屋へと入り、男に声をかける。
『・・・あら、何やってるの?』
女の言葉に、その男が床から顔を上げた。
そして、嬉しそうに先程床に描いたものを指差す。
『あ、姉さん!見てよこれ。今度こそ成功するよ』
示されたそれを見ると、女は少し興味ありげに口を開く。
『へぇ・・・これが・・・・・・。それで、あなた行くつもりなの?』
『うん、まあね。・・・約束があるんだ。今度こそ果たさなきゃいけないから・・』
『・・・そう』
『―――じゃあ早速、試してみようかな・・・』
男は床に描いたものに両手を添える。
パアッ・・
途端、部屋が光に包まれる。
―――しかし、
『・・・・・・・・・・』
『・・・・・・・・・・』
光が消えても、何も変化が無い。
『・・・ちょっと・・何も起きないわよ?』
女は疑問を口にする。
その疑問に男は頭を掻きながら、機械のような物を覗き込む。
『・・・・・・あれー?そんなハズは・・・・・・あ』
『何?』
『・・・レーダーに誰かが反応してる・・・・・・。こっちに来たのかな?でも一体どうして・・・』
手を顎にやり、少し考え込む。
『こっちにって、あんた・・・』
その言葉に少し呆れたような声を出す。
『うーん・・しかも位置がズレてる・・・普通ならここのはずなのに・・・・・・。ま、一応成功したってことで』
今度こそ女は男の言葉に呆れた。
『・・・・・・あんたね・・・その性格直したらどうなの・・・』
『えー。無理だよー。僕はマイペースが好きなんだし』
そして純粋に二コリと微笑んだ。
『・・・とりあえず、この人を向こうに帰さなきゃ。・・・・・・それまでお預け、かな・・・』
――――――――それが、一人の少女の運命を変える出来事の始まりだった。
Act.0 プロローグ
「くあー。いい昼だー」
・・・・・・お願い。誰も「昼かよ!?」ってツッコまないでクダサイ。
私の名前は。現在14歳。
今、ものすごく『鋼の錬金術師』にハマってます。
そして、
「あぁ――。こんな日はハガレンの世界に、アメストリス国に行きたいぃ―――!!」
現実、無理だと言うことを口走る。
今日、妹は部活で、親は仕事で多忙を極めている。
つまり今、家には私しか居ないのです。
「・・・・・・散歩でも行こうかなぁ・・・」
私は愛用の肩掛けバッグを引っつかみ、自作の錬成陣を描いた、細いリストバンドを左手首に付ける。
「あ、そうだ。これ忘れちゃいけない」
部屋を出る前に思い出して、机の上に大切そうに飾っているペンダントを首にかける。
緑色の宝石が一つ付いている指輪。
昔、一緒に遊んでくれたお兄さんにもらった大切な物だ。
しかも昔すぎて、顔は辛うじて覚えてはいるが、肝心な名前を覚えていない。
「・・・元気にしてるかな、お兄さん・・・・・・」
パッと顔を上げ、自室を出て玄関へ行く。
「今日はどこ散歩しようかなぁ・・・。いつもと違う場所がいいよね。新たな発見があるかもしれないし」
と言いつつ、玄関のドアを開けた。
途端、降り注ぐ紫外線。
「あー。やっぱ砂漠を散歩するんだったら、日焼け止め塗った方がいいよねー」
『そうね。その方がいいわよね。紫外線はお肌の大敵なのよんv』
・・・・・・誰かの呟きが聞こえた気がした。(つーか誰よ!vって!?)
クルリと後ろを振り向き、ドアノブに手を掛けようとした。が。
「あ、あはははは。そうだよね。砂漠にドアなんてあるわけ無いもんねー」
自分も半ば壊れている。
・・・・・・ん、砂漠?
・・・・・・んん?このお肌にくる紫外線?
・・・・・・んんん?辺り一面黄色の世界?
・・・・・・・・・・いやいや。『辺り一面銀世界』なら聞いたことあるけど。
そうじゃなくて。
「――――――――――何でドア開けたら砂漠なんだよ―――――!!!」
ふあぁぁぁぁん。クレオパトラの呪いだぁぁぁ――――!!(違ぇよ)
「――――――――――しかも何でドア消えてんだよぉ―――――!!!」
ふあぁぁぁぁん。ピラミッドに取り殺されるぅぅぅぅ――――!!(ワケ判らん)
・・・・・・・・・・スミマセン。私にも判りません。
とりあえず力一杯叫んでみたが、私の声は砂漠の中へと吸い込まれていった。
・・・・・・・・・・空しすぎる。(泣)
「(グスン)・・・ん?何アレ・・・・・・?」
視界の隅――っこの方に街が見える。
「う〜ん・・・ここにいても仕方ないし・・・・・・」
私は砂漠の中の街に向かって走り出した。
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2005.07.23.Sat