「ねぇ、   お兄ちゃん」










「ん?なあにちゃん」










幼い私が声をかけると、お兄さんは笑顔で返事をしてくれる。










「お兄ちゃんは、もうすこしでまた旅にでちゃうってほんと?」










「うん。僕ももうちょっとここにいたいんだけどね、色々とやらなくちゃいけない事があるんだ」










穏やかな目をしてお兄さんは言った。










「・・・そうだちゃん。これをあげる」










そう言って、首にかけていた緑色の石がはめ込まれた指輪のペンダントを私の首へと移した。










「また会えた時に、君がこれを持っていればすぐに分かるからね」










「うん!ありがとう、   お兄ちゃん」










そして優しく微笑んでくれたお兄さんの顔を、私は忘れはしない。






























Act.10 傷の男






























私はゆっくりと目を開けた。


























「・・・・・・・・・・・・あれから、8年か・・・・・・」
























今、お兄さんはどこの国で旅してるんだろう。






ベッドの横に置いた指輪の緑の石がキラリと光る。






「・・・・・・ん?指輪の裏に何か彫ってある・・・」












指輪を掴むと、裏には筆記体で文字が刻まれていた。












「・・・・・・じ・・・ぐ・・・・・・ジグ?」










ジグって、あのお兄さんの名前・・・?











・・・いや、違うな・・・そんな名前じゃなかったはず・・・・・・。









じゃあ、ジグって誰・・・?









・・・・・・っていうか、なんで8年間この文字に気付かなかったんだ自分。






















「・・・・・・・・・・・・あっ、そうだ。エドとアルは!?」







素早くペンダントを首にかけ、隣のエドとアルの部屋に行く。







「エド、アル・・・?」









部屋はエドとアルの荷物が置いてあるだけで、本人達はいなかった。









「・・・どっかに出掛けてるのかな・・・・・・あ!」









そうだ、あの件の次の日は・・・・・・。






・・・やばい。









「と、とりあえず東方司令部に・・・・・・!!」







宿から出て急いで東方司令部に向かった。













































「・・・・・・あら、ちゃん?」






「あ・・・リザさん・・・」










東方司令部の目の前まで来たところで、リザさんにばったり会った。






「・・・・・・あ、えと・・・エドとアル知りませんか?」






「・・・エドワード君とアルフォンス君なら、少し前に大通りの方へ歩いていったけど・・・」





大通りの方角を指差しながらリザさんは答える。







「さっきちゃんが一緒じゃなかったからどうしたのかと思って・・・・・・」







「・・・なんか置いていかれたみたいです。全く、起こしてくれればよかったのに・・・・・・」








・・・なんか無性に腹立ってきた・・・・・・!!







「あ、リザさん。これからタッカー邸ですか?」





「ええ、そうよ」




「・・・・・・ニーナたち、殺されたんですよね・・・」





「・・・・・・え・・・?どうして知ってるの・・・・・・?」




「・・・・・・私の第六感です。そういうことにしておいてください」







やっぱり、あいつか・・・。
















ゴーン ゴーン














時計塔の鐘がなった。










「・・・あら、9時ね・・・・・・」









・・・・・・9時!?






「そうだ、こんなゆっくりしてる暇ないんだった!エドとアル追いかけないと!!・・・じゃあリザさん、ありがとうございました!」





「ええ、それじゃあ・・・」




早口にお礼を言って、先程リザさんが指差した方向へと走る。













































「うわ・・・」







やっと着いた時計塔の真下では、一人の憲兵が血だらけで殺されていた。






周りの人たちも恐怖に悲鳴をあげてる。

















ドォォォン


ガラガラ












住宅の路地の方で大きな破壊音が聞こえた。









「あっちか・・・!」










急いで音のした場所へと走る。
















「・・・・・・いた!」














脇腹辺りを破壊されたアル。






機械鎧を刃に変えたエド。






そして、破壊の右手を持つ傷の男スカー
















「・・・まずはこのうっとうしい右腕を、破壊させてもらう」





スカーがエドの右腕を掴むと、光が走る。








ボッ





エドの機械鎧がバラバラに破壊された。









「に・・・・・・兄さん!!




















このままじゃ、エドが殺されちゃう・・・。








・・・・・・そんなの絶対にさせない!!



















「待て!スカー!!」










私が叫ぶと、スカーの動きが止まり、こちらを向く。








「・・・・・・あんたなんかに、絶対エドを殺させはしない!!」












そうだ、もう誰も・・・・・・。












「・・・今度は私が相手だ、スカー!!」















----あとがき-----

管理人 「皆さん、あとがき一回ぶりです」
エド 「・・・まあ、前回はあとがき出来る心情じゃなかったからな」
管理人 「そうなんです!あんな話なのに、こーんなあとがき入ったらぶち壊しでしょう」
エド 「・・・・・・確かにな」
管理人 「・・・・・・なんか今日のエドワードさん素直じゃありません?」
エド 「別に・・・」
管理人 「あー!分かった!今回エドの言葉が一つも無かったからだ!!」
エド 「(ピキッ)分かってんなら書きやがれコンチクショウ!!
管理人 「え・・・全然気が付かなかったから・・・。それにアルだって一言・・・」
エド 「あるだけマシじゃボケェ!」
管理人 「エドのキャラが変わったー!?」

                      終了





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2005.11.20.Sun