「ささ、遠慮せずに召し上がってください」





隣にはエド、少し離れた目の前にはヨキ。





そして手前には何気に豪華な料理。















くそう、へんなヒゲ面のくせに贅沢してやがる・・・・・・!









そう思いながらも、料理に手をつけた。






























Act.6 炭鉱の経営権






























「いいもの食べてますねぇ。街はあんな状態なのに」








エドはフォークで刺した料理を見ながら話す。





「いや、お恥ずかしい話ですが、税の徴収もままならず困っておりますよ。おまけに先程のような野蛮な住民も多く・・・ははは、いやまったくお恥ずかしい」







お恥ずかしいのはあんたのヒゲだ。







「納税の義務をおこたっておきながら、権利ばかり主張する、という訳ですね」





「その通り。おお、エドワード殿は話がわかるお方だ」





「この世の理は全て錬金術の基本である『等価交換』であらわす事ができますからね。『義務』あっての『権利』でしょう」






「なるほどなるほど。うむ、すばらしい。という事は、これも世の理として受け取っていただけますかな?」








そう言って、ヨキは呼び鈴を軽く鳴らす。





すると、軍服を着た男が小袋をエドの前に置いた。









「エドワード殿は国家錬金術師だけあって、上の方に顔がきくと思われる。ほんの気持ちですが・・・」







「これは・・・いわゆる『ワイロ』というやつで?」





その袋をつまんで揺らしながらエドは言う。








「『気持ち』ですよ。私は一生をこんな田舎の小役人で終わりたくはないのです。わかっていただけますでしょう?」







はー。つまりは出世して中央とかに行きたいと。







難しいことは分からないけど、これだけは理解できる。






だって顔に出てんだもん。








そんな事を考えていると、ヨキが私に視線を移す。






殿、と申されましたか?エドワード殿のお連れの方とは知らず、失礼いたしました」





「・・・え、えと、いや別に・・・」







改まって言われたので、返事が曖昧になってしまった。











































「では、ごゆっくりお休みください」






「どーも」










そこでヨキとは別れ、店の時とは違う部下二人(C・D)に案内される。









「ここです」







部下Cに、部屋の中へ促される。








「ごゆっくり」







そう言って部下C・Dは去っていった。








「・・・ってあれ?」






「・・・・・・・・・・・・」

















隣にはエド、目の前には少し離れたベッド二つ。


















「・・・お、同じ部屋ですか」





「・・・・・・みたいだな」








いや、っていうか、普通は男女別でしょう。






・・・・・・はっ、ま、まさか・・・。







「あんのヨキの野郎・・・大きく余計で迷惑なことしやがって・・・・・・!!」





「・・・声が低いぞ、声が。・・・・・・仕方ねぇか今日は。わざわざ呼び戻すのも面倒くせぇ」





「そうだね・・・」








それからそれぞれのベッドに入る。









そのまま私は眠りについた。


















夜中、火事を知らせる鐘がなっていることも知らずに・・・。













































「ひでぇ・・・」




朝、店に行ってみると、跡形も無く燃えてしまっていた。




「昨日の夜、ヨキの部下が親方の店の周りをうろついてたの俺見たぞ」





「畜生・・・汚ねぇマネしやがる・・・」





燃え尽きた店の前で、女将さんが看板を持って泣き崩れていた。






近くに座っていたカヤルが口を開く。







「・・・・・・親父が錬金術をやってたのは、この街を救いたかったからなんだ。なぁエド、あんた黄金を錬成できる程の実力者なんだろ?ぱっと錬成して、親父・・・街を救ってくれよ・・・!」






「だめだ」







「そんな・・・いいじゃないか、減るもんじゃないし!」






「錬金術の基本は『等価交換』!あんたらに金をくれてやる義理も義務もオレにはない」






「てめえ・・・・・・・・・てめえそれでも錬金術師か!!






カヤルがエドの胸倉を掴む。




その目には涙が浮かんでいる。





「『錬金術師よ大衆のためにあれ』・・・・・・か?ここでオレが金を出したとしても、どうせすぐ税金に持っていかれ終わりだ。あんたらのその場しのぎに使われちゃ、こっちもたまったもんじゃねー」





掴んでいたカヤルの手を振りほどく。




「そんなに困ってるなら、この街出てちがう職さがせよ」






服を整えながら言い放つ。












「小僧、おまえにゃわからんだろうがな。炭鉱ここが俺達の家で、棺桶よ











































どんどんエドが歩いて行く。





気がつけば、沢山の石が乗せられたトロッコがあるところに来ていた。








「エド、待ってよ!」






「兄さん、本当にあの人達放っておく気・・・」





「アル。このボタ山、どれくらいあると思う?」






いきなりあるトロッコの前で立ち止まって聞く。







「?1トンか・・・2トンくらいあるんじゃない?」





「よーし。今からちょいと法に触れる事するけど、おまえら見て見ぬふりしろ」





よいしょーっとトロッコに登り始めるエド。











「へ!?」







「OK!どんどんやっちゃえエド!!」










アルは私の方を一瞬振り向いたが(その視線が痛かったのは気のせい?)、すぐにエドに戻す。






「・・・それって共犯者になれって事?」





「ダメか?」





すでに両手を合わせている。






そのまま両手をボタ山につけた。




「ダメって言ったってやるんでしょ?」





「なぁに、バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ」





「やれやれ、悪い兄を持つと苦労する・・・」



















































「・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの・・・」









私達の後ろに山のように重ねられている金を見て、ものすごく唖然としているヨキと、その後ろで口をあんぐり開けている部下E・F。







あの後、エドが錬成した金を三人がかりでヨキの屋敷まで運んできた。









「炭鉱の経営権を丸ごと売ってほしいって言ってるんだけど」







いつの間にか後ろの金の山に部下E・Fが寄っている。






「足りませんかねぇ?」






「めめめ滅相もない!!」






慌てて首を横に振るヨキ。







「これだけあれば、こんな田舎におさらばして・・・」







両手を組んで「うひひ・・・」と怪しく笑い、遠い目をしながら何事か想像(もしくは妄想)している。







「それから・・・・・・」





ちらっとヨキはエドを見る。





それに気づいたエドは、にっこりと笑って、





「ああ、中尉の事は上の方の知人にきちんと話を通しておいてあげましょう」





と言った。




「錬金術師殿!!」





涙を流しつつ、エドの手を取るヨキ。





エドは「ははは」と乾いた笑いをしている。





「でも金の錬成は違法なので・・・、バレないように一応、「経営権は無償で穏便に譲渡した」っていう念書を書いてもらえるとありがたいんですけど・・・」







「おお、かまいませんとも!ではさっそく手続きを・・・」



「しかし錬金術師殿もなかなかの悪ですのう」



「いやいや、中尉殿ほどでは」






「ほほほ」「ははは」と(怪しく)笑い合っている。







「・・・・・・たのしそうだネ」






アルがポツリと言った。



















































「はーい皆さん、シケた顔ならべてごきげんうるわしゅうv」










エドがそう言うと、あからさまに嫌な顔をする炭鉱の住民。










「・・・何しに来たんだよ」








「あらら、ここの経営者にむかってその言い草はないんじゃないの?」







意地悪くエドが言う。






「てめ何言っ・・・」






怒ったオヤジの一人が言い切る前に、三枚ほどの紙を目の前に出す。









「・・・・・・これは・・・」







「ここの採掘・運営・販売・その他全商用ルートの権利書」





「なんでおめーがこんな物持って・・・あ―――!!名義がエドワード・エルリックって!?」





「「なにぃ!!?」」





驚くカヤルにホーリングにオヤジ共。






「そう!すなわち、今現在!この炭鉱はオレの物って事だ!!」





前言よりもっと驚くカヤルに(略)。









「・・・とは言ったものの、オレたちゃ旅から旅への根無し草」





「権利書なんてジャマになるだけで・・・」






「・・・俺達に売りつけようってのか?いくらで?」





「高いよ?」





にやりと笑うエド。






「何かを得ようとするなら、それなりの代価を払ってもらわないとね。なんてったって高級羊皮紙に金の箔押し」







まず・・・というように権利書を置く。





「さらに保管箱は翡翠を細かく砕いたもので、さりげなくかつ豪華にデザインされてる。うーん、こいつは職人技だね。おっと鍵は純銀製ときたもんだ。ま、素人目の見積もりだけど、これ全部ひっくるめて――――――――」







ホーリングたちに緊張が走る。






親方んトコで一泊二食三人分の料金――――――てのが妥当かな?」








「あ・・・等価交換・・・」





「はは・・・・・・ははははたしかに高けぇな!!よっしゃ買った!!





「売った!!」









その場の空気が明るくなってきた。






やっぱりエドって、困ってる人を見捨てられない性質、なんだね。






「錬金術師殿、これはいったいどういう事か!!」







部下A・Bを連れて、ヨキが勢いよくドアを開けて入って来た。




手には石が握られている。




あ、あの石って・・・・・・。







「これはこれは中尉殿。ちょうど今、権利書をここの親方に売ったところで」





「なんですとー!!?」




真っ青になっていくヨキの顔。






「いやそれよりも!あなたにいただいた金塊が全部石くれにおりましたぞ!どういう事か説明してください!」












「・・・いつ元に戻したの?」




「さっき出がけにちょろっと」




ちょろっと・・・・・・?







「金塊なんて知りませーん♪」





「とぼけないでいただきたい!金の山と権利書を引き換えたではありませんか!これではサギだ!」





「あれ?権利書は無償で譲り受けたんですけどね。ほら、念書もありますし」







「はうっ!?」





エドは念書を取り出し、ヨキに見せる。






「ぬぐぐ・・・この取引は無効だ!おまえ達!権利書を取り返・・・・・・せ!?」







ぬうっとオヤジがヨキ達の前に立ちはだかる。





「力ずくで個人の資産を取り上げようなんていかんですなぁ」





「これって職権乱用ってやつか?」





「う、うるさいどけ貴様ら!ケガしたくなかったらさっさと・・・」





「炭鉱マンの体力、なめてもらっちゃ困るよ中尉殿」






べきごきと威嚇を込めて指を鳴らすオヤジ。




その後ろにも沢山のオヤジが・・・!








ドカ ゴキ パリーン






部下A・Bが炭鉱マンに倒される。





「ひぃ!!」






「あ、そうだ中尉」






エドが声をかけると、ヨキがものすごくビクりと反応する。






「中尉の無能っぷりは、上の方にきちんと話を通しときますんで。そこんとこよろしくv」








その言葉を聞いたヨキは、まるで絶望の淵に立たされてしまっているようだ。淋しく風が吹いている。







「よっしゃー!!酒持って来い、酒――――っ!!」





























「飲めーっ!!」





「飲まなきゃ大きくなれんぞー!!」





「嬢ちゃんも遠慮せず飲めー!!」





ええ!?無茶言わないでよ!!」





「っていうか未成年者に酒飲ますなよ!!」





「なにぃ!!俺がおめー位の年の頃なんてなぁ」







































こうしてユースウェル炭鉱での一夜を楽しく過ごした。





お腹を出して寝ていたエドを、アルが怒っていたのは言うまでも無い。

























-----あとがき-----

管理人 「ユースウェル炭鉱編終了〜!」
エド 「はぁ〜、やっと終わったな」
管理人 「やっとって!前編・後編に分かれただけでしょ!」
エド 「それでも長いもんは長いんだよ。考えてもみろ、お前先週は更新してねーだろ」
管理人 「(ギクッ)」
エド 「・・・・・・・・・・・・」(しらー)
管理人 「・・・・・・・・・・・・てへ☆」
エド 「てへ☆じゃねぇ―――!!
管理人 「おおv今のいい感じだったよエド!素敵なノリツッコミ!!」(うっとり)
エド 「う、うるせぇ――!!
管理人 「きゃー!斬られる―――!!?」

エドワード・エルリック、機械鎧刃錬成のため強制終了。





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2005.10.22.Sat